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インドネシアのリゾート地バリ島に押し寄せる中国人旅行客の増加は、観光市場の力学だけでなく、神様の顔まで変えつつある。クタビーチの道沿いに並ぶ露店からウブド村の富裕層向けギャラリーまで、島中で売られている木像や石像のほとんどが、中国仏教の慈悲の女神、観音の顔に彫られているのだ。

バリ島で売られる彫像が観音様に変わった
 ヒンドゥー教徒が多数派を占めるバリ島では、ほんの数年前まで、彫像といえば象の頭を持つガネーシャや、神鳥ガルーダに乗るビシュヌなど、ヒンドゥー教の神を模したものばかりだった。現地のツアーガイド、アディ・ウィジャヤ氏は、「中国人観光客はバリ島の未来だ。我々はいろいろなものを彼らの好みに合わせてきた」と話す。

 2009年、世界的な経済危機をよそに、外国旅行に出かけた中国人の数は、5.2%増の4220万人を記録した(2001年には700万人足らずだった)。一方、旅行に使われた金額は、前年比16%増の約420億ドルに達した。

 中国人旅行客の渡航先の3分の2以上は、同国の特別行政区である香港とマカオが占める。しかし、カメラを手にした気前のいい中国人ツアー客の姿は、今や世界中で見られる。存在感を増してきたその様子は、1980年代に世界の観光地に突如押し寄せた日本人観光客を彷彿させずにはおかない。

 中国人観光客の突然の台頭は、ここ数十年の世界の観光市場で最大の出来事だと、複数のアナリストが口をそろえる。2003年まで、中国政府が観光目的の渡航を認めていたのは、アジア太平洋地域を除けばトルコとエジプトだけだった。

 2003年以降、中国政府は100近い国への観光目的の渡航を認めるようになった。米国への旅行は2008年6月に解禁された。ただし、渡航を許されているのは豊かな大都市に暮らす人のみだ。

フランスにとって一番のお客様は中国人

フランスの大手デパートは中国人向けの買い物ツアーに力を入れている〔AFPBB News〕
 フランス政府の調査によると、2009年に中国人観光客がフランス国内で使った金額は、ロシアを含むすべての国の観光客を上回ったという。フランスに入国した中国人の数が2008年から17%減ったにもかかわらずだ。

 フランスの旅行会社は、中国人向けの買い物ツアーに力を入れている。ギャラリー・ラファイエット、プランタンといったパリのデパートは、中国語での表示やサービスを開始した。

 イタリア政府は中国の富裕層を呼び寄せるため、ぜいたくな休暇を過ごせる環境を用意しようとしている。その一方で、観光ビザで入国し、闇経済に消えていく中国人の増加を抑えようともしている。
米国では、マリオット・インターナショナルなどのホテルチェーンが中国風の朝食を導入し、中国語ができる人材の採用を続けている。

 マリオットの会長兼CEO(最高経営責任者)、J・W・マリオット・ジュニア氏は、最近北京を訪問した際、「中国人観光客は外国を訪れることへの欲求が非常に高い。また間違いなく、どんどん豊かになっている。世界中に展開する我々のリゾートでどのようなおもてなしができるか考えているところだ」と語った。

 複数の調査によると、中国人観光客は何より買い物を楽しみ、団体ツアーに参加することを好むという。中国人観光客の大部分は、泊まる場所にはあまり関心がない。宿泊費を節約し、買い物の予算を増やしたいのだ。

 若手ながらも仕事で欧米諸国を定期的に訪れるイボンヌ・ドゥ氏は、こう説明する。「こうした傾向には文化的な要素もある。外国に行くと必ず、家族や友人からお土産を期待される。それに、中国ではエルメスのバッグは手に入らないか、手に入ってもはるかに高いといった理由もある」

 中国人観光客から収入を得ようとする人々にとって、そうした傾向は1つの難題となっている。バリ島のガイド、ウィジャヤ氏は、「問題は、彼らが中国人ガイド付きのパックツアーでやって来て、中国人のホテルに泊まり、中国人のレストランで食事をすることだ」と話す。

買い物以外にはお金を落とさない
 旅行会社も中国市場向けのツアーの再検討を強いられている。富裕層を対象にしたサファリツアーを企画する南アフリカ共和国のdmアフリカは最近、上海の営業所を閉めることにした。CEOのポール・ハンフリーズ氏は「中国には、ぜいたくな旅をしたがるような人はいないという結論に達した。彼らはモノに金を使いたがり、ホテルに使いたいとは思っていない」と説明する。

 中国人観光客の買い物重視を一層促進する事実がある。中国の旅行会社はしばしば、小売店からのキックバックで埋め合わせることを見込んで、パックツアーを格安で販売するのだ。

 北京にあるインペリアル・ツアーズの共同経営者ガイ・ルービン氏は「おかしなことに、外国旅行を企画する会社の大多数は、買い物からのキックバックを計算に入れないと、収支がとんとんか、赤字になる。だから、大抵のツアーは1日に5つの店を回り、その間に観光を挟むといった形にならざるを得ない」と話す。

 ただし、こうした状況が変わった前例はある。「日本人や韓国人は(外国)旅行を始めた頃、やはり団体で行動し、買い物ばかりしてた」とルービン氏は振り返る。「(中国人)旅行者もいずれ、パリを訪れた時、ルイ・ヴィトンの店に直行してバッグを買うのではなく、ルーヴル美術館のカルチャーツアーに参加したり、チョコレートの作り方を習ったりするようになるだろう」

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